再現率95%!2023年度技術士口頭試験 完全再現

技術士口頭試験 完全再現
目次

はじめに

技術士第二次試験の口頭試験は、技術士としての資質(コンピテンシー)が試される最終ステージです。

ここでは、実際に行われた昨年度の口頭試験の内容を再現し、試験当日の雰囲気を体感できるようにしました。選択科目は「建設部門 – 施工計画、施工設備及び積算です。

この再現は、試験直後に5時間かけて少しずつ思い出しながら作成したものです。しかし、どうしても1つ思い出せない質問があったため、再現率は95%としております。その時に考えていたことや、焦りの感情なども”心の声”として表現しております。

受験生(私)がどのような質問を受け、どのように答えたかを対話形式で紹介しますので、ぜひ試験対策の参考にしてください。

私の口頭試験の結果は、60~70%合格ラインぎりぎりでした。

なかには80~90%の得点の方もおられるようですが、私の場合はそこまでの回答をすることが出来ませんでした。そのため、最低ラインの回答例として参考にしていただければと思います。

口頭試験完全再現 【建設部門 – 施工計画、施工設備及び積算】

試験官A:50~60代の優しそうな男性

試験官B:30代くらいの若い男性

受験者  :シビライ

(試験室の前の椅子で待機。その間、口頭試験を終えた前の受験者が退場してくる)

(その後しばらくして、試験官が試験室の外まで呼びにきてくれる。この時間で業務詳細を読んでくれているのか?)

(試験室に入室)

受験者

「失礼します。受験番号〇〇〇〇のシビライと申します。本日はよろしくお願いいたします。」

試験官A

「よろしくお願いします。」

試験官B

「よろしくお願いします。」

試験官A

「あなたの経歴や業務詳細については事前に読ませていただきましたので、これらについてこれから質問させていただきます。」

試験官A

1.「これまでは経歴的に道路工事が多かったのですか?」

受験者

「道路工事もですが、躯体工事や陸上土木に携わることが多かったです。」

試験官A

「都市土木の経験が多いようですね。」

受験者

「はい。」

試験官A

2.「○○(海外)にも行っていたのですか?」

受験者

「入社⚪︎年目から⚪︎年目にかけて行っておりました。」

試験官B

3.「これまでの業務で、どのようにコミュニケーションを取ってきましたか?」

受験者

(最初は「コミュニケーション」からか)

受験者

「業務詳細に書いた工事についてですが、月に一度、近隣への説明会を行なっていました。明確な意思疎通を図るために、書面主義による分かりやすいコミュニケーションを行いました。また、関係者の理解度に応じて伝え方の手段を使い分けるようにしました。」

試験官B

4.「具体的にはどんな関係者がいたのですか?」

受験者

「近隣施設の管理者、近隣住民、発注者、専門工事業者です。」

試験官B

5.「これまでのコミュニケーションで苦労した点はどんなところですか?」

受験者

「近隣の方に説明する際、現場は仮囲いで囲まれており中の様子が分からないため、工事の内容を理解してもらうことに苦労しました。実際に作業員や重機が作業している様子を写真や動画で見せたり、月に一度撮影していた定点写真を用いて工事の進捗や位置を見える化して分かりやすく伝えることを心掛けました。」

試験官B

6.「これまでのあなたの業務で最もリーダーシップを発揮したと思う事例について説明してください。」

受験者

(次は「リーダーシップ」か。まずは中庸案を出したところまで話し、詳細は次の問いで説明しよう。)

受験者

「こちらも業務詳細の工事になりますが、隣接するオフィスビルから、施工時の振動について震度0相当という振動規制法や条例よりも厳しい条件での施工を求められました。一方で発注者からは、工程の遵守を求められておりました。本工事は地上の既設道路を切り回しながら施工ヤードを確保していくという工程があり、道路の切り回し時期については、事前に発注者と警察等との協議により決まっていたため、工程の遅延が許されない状況でした。そういった利害関係の相反がありましたので、技術的な中庸案を提案し、調整を図りました。

試験官B

7.「???」

受験者

「???」

受験者

(あれ、中庸案の詳細については聞いてこないのか?)

ここでもう一つ何か聞かれたが、思い出せない。ただし、コンピテンシーを問う質問では無かった。

提案した中庸案についての詳細を聞かれると思ったが、全然関係ない質問に飛んだため少し動揺した。

試験官A

8.「土留工事はあなたが担当したのですか?」

受験者

「土留工事については、計画と施工管理を私が主担当として行っておりました。」

試験官A

9.「あなたのこれまでの業務内容を振り返り、良かった部分や悪かった部分はありますか。またその後の業務にどう活かしているかも含め、具体例を教えてください。」

受験者

「評価」に移ったか)

受験者

「業務経歴の上から2つ目の内容になるのですが、現場打ち排水桝の型枠組み立て時の墨出しにおいて、箱抜きの高さを間違えて手戻りしてしまったという失敗事例があります。私が現場不在となる前日に、箱抜き高さについて、現地で作業員口頭指示を出しました。そこで私と作業員の認識に相違があり、ミスが発生してしまいました。
それ以降の業務では、引継時などは職長や他元請け社員など複数の関係者間で情報共有をするようにし、メールや図面など書面ベースでの指示をするように心がけております。」

試験官A

10.「工法の変更をするに当たり、関係者とどのようなやりとりがあったか、経緯について教えて下さい。」

受験者

(”経緯”について?どのコンピテンシーについての質問だろう。年齢的に、本当に自分がやった業務なのかを疑われているのか?)

受験者

「月に一度の近隣説明会において、〇〇工事を予定していると説明したところ、近隣ビルの管理者から施工時の振動に関する要求がありました。当初計画では〇〇工法を予定していましたが、振動予測計算の結果、当初工法では近隣からの要求を満たせないということが分かりました。そのため、国総研の振動予測計算を元に、当初工法より振動を抑えられる工法への変更を検討しました。」

試験官B

11.「あまり私が分かっていないのですが、振動予測計算はどのような計算なのですか?」

受験者

「国交省の国総研の文献にある計算式を採用しました。振動の発生地点までの距離や、工法毎に発生源の大きさも設定されているため、それらに現地の条件を代入し、何パターンかの予測値を算出しました。」

試験官B

12.「工法を変更するにあたり、利害関係の対立はありませんでしたか。」

受験者

(なんでこんな工法変更に関して聞いてくるんだ?やっぱり疑われている?)

受験者

「近隣との協議は基本的に発注者を通してやり取りする形でありましたが、振動については近隣から発注者に強い要望があり、発注者からも当社へ要望がありました。発注者としても、地上道路の切り回し日程を遅らせることは出来ないという部分もあり、工法の変更については利害が対立することはありませんでした。」

試験官A

13.「発注者からすると、金額的な面も含め工法変更はあまり望ましいことではないと思いますが、その辺はどのようなやりとりがありましたか?」

受験者

「工法変更した部分だけで金額は⚪︎倍程となりましたが、公益の確保を優先したいという点は発注者も共通していたため、設計変更をみていただく形になりました。」

この時は本当に自分がやった業務なのかを疑われているのでないかという先入観で頭がいっぱいになっており、早くコンピテンシーの得点に繋がる質問をしてほしい、と焦っていた。しかし、後から振り返ると「リーダーシップ」の点数がこの時点で足りておらず、助け船を出していてくれた可能性がある。

そうであれば、利害関係をどう調整したかどのような中庸案を提案したかをこのタイミングで説明しないといけなかった。しかし、設計変更をみてもらったというニュアンスで「利害の対立はありませんでした」と答えてしまった。

試験官A

14.「業務を進めるにあたり、リソースの配分をどのように行いましたか。具体的な例を教えて下さい。」

受験者

(やっと質問が変わった、次は「マネジメント」か)

受験者

「こちらも業務詳細の内容になりますが、部分的に工法変更をしたことにより、当初工法で予定していた1班での施工を2班体制で行うこととなりました。当初工法を行う班をA班、変更後の工法を行う班をB班とすると、B班の施工が全体工程のクリティカルパスになる状態でした。そのため、A班がB班の施工を手伝う形で、B班の機械稼働率が最大となるように人員の配分を行いました。」

試験官B

15.「技術者倫理についてお聞きします。あなたは業務の中でどのように技術者倫理を意識していますか。」

受験者

(ようやく「技術者倫理」に入ったか。開始からすでに15分ほど経過しているな。ここは簡潔に答えて、早く「継続研さん」の質問をしてもらわなければ。)

受験者

「施工計画を行う上で、公益確保の観点から、第三者の安全確保環境保全を最優先に考え計画を立てるようにしております。」

試験官B

16.「具体的にはどのようにしましたか。」

受験者

「業務詳細の工事については、供用中の道路を切回しながらの工事であったため、一般車両が行き交う道路や歩道が常に施工ヤードに隣接している状態でした。そのため、施工ヤードへの出入り口には警備員を配置したり、歩道の曲がり部など見通しの悪い箇所は仮囲いを透明パネルに替えるなどを行い、一般車両や歩行者が事故やトラブルにならないように意識しました。」

この時点でまだ「継続研さん」に関する質問が来ていなかった。

そのため、このまま時間切れになるのが怖くて、あえて環境保全については話さなかった。

試験官B

17.「これまで相反した利害関係どのように調整してきましたか。その際、何を重視して調整しましたか。具体例を教えて下さい。」

受験者

(、、、ん?ここでこの質問?
 さっき話さなかったっけ?まさかまだ点数が足りてない?

受験者

”何を重視”は、
「技術者倫理」”公益確保”を聞いている?
いや、でもそれはいま話したばかりだよな。
トレードオフの事例か?
コンピテンシーに繋がるとは考えにくいし、この時間ぎりぎりのタイミングで聞くことではないだろう。そうなると
「リーダーシップ」”明確なデザインと現場感覚”
を引き出そうとしているのか?

どちらにせよ、同じ内容を話してもこれ以上の加点はなさそうだな、ここは他のパターンで回答しよう。)

この時点で「リーダーシップ」”利害調整”については既に話したと思い込んでいたため、なんでもう一度聞かれるのだろう、何について聞かれているのだろう、と戸惑った。

(実際は”利害調整”の詳細について、準備していた回答をまだ話していないということに試験後に気付いた。)

受験者

「業務詳細の工事になりますが、土留工事の後、躯体構築工事を行いました。全部で〇〇ブロックの躯体でしたが、一部分を早期に引き渡して欲しいという要求がありました。そこで施工班を増やしたり、早出残業等により工事を行いましたが、一方で品質が確保されているかという部分で懸念がありました。そこで社内の品質部署のパトロールを増やしてもらうよう依頼したり、社員の巡視の頻度を増やすなどにより、品質を損なうことが無いように管理し進めました。」

試験官A

18.「最近の倫理に反するニュースなどで気になったものや印象に残っているものはありますか。」

受験者

「技術者倫理」か。さっきの回答は、求めていた答えになっていたのだろうか。残りの時間がないから質問を切り替えたのだろうか。まあここはとりあえず、残りの質問に集中しよう。)

受験者

「○○県○○市のビル建築現場において、品質データの改ざん等による施工トラブルが発生したニュースが印象に残っています。」

試験官A

19.「万が一、あなたが倫理に反する行為を求められた場合、どうしますか。」

受験者

「まずは事実関係を確認し、技術的な解決ができないかを考えます。その上で上司に相談し、説得を試みます。それでダメなら、さらに上位の上司に、そして社内の窓口に報告します。組織内でやれることを尽くしても解決できない場合は、しかるべき諸監督庁への内部告発を行います。」

受験者

(やばい、時計の針がほぼ20分に重なっている。あと残り数十秒か。いつ終わりになってもおかしくない。早く来てくれ「継続研さん」

試験官A

20.「最後に継続研さんについて質問します。あなたはこれまでどのように資質の向上を図ってきましたか。また技術士取得後はどのように資質向上を図っていきたいですか。合わせて教えて下さい。」

受験者

(やっときた「継続研さん」

受験者

「これまでは社内研修の他、講習会への参加、学会誌の購読等を行なってきました。またコンクリート主任技士やコンクリート診断士の資格勉強を通し、技術面での研鑽を行ってきました。これまでは自己学習など受動的な研鑽が多かったため、今後は論文投稿や学会での発表など、能動的な研鑽を積極的に行っていきたいと考えております。」

試験官A

「分かりました。ではこれで口頭試験を終わりたいと思います。」

受験者

「ありがとうございました。」

(試験室から退室)

受験者

試験終了直後:
やりきった、全てのコンピテンシーについて答えたしきっと大丈夫だ
(自信満々)

受験者

再現作成時:
あれ、そういえばリーダーシップに関して準備していたメインの回答話していないじゃん、、
てかリーダーシップについて詳細聞かれたっけ?うわ、ちゃんと60点いってるかな
(冷汗ダラダラ)

おわりに

以上が、昨年度の技術士第二次試験 口頭試験の再現試問です。

その他、試験全体を通して以下のような印象を受けました。

・試験官は終始穏やかな口調でゆっくり喋る感じであった

・受験者の椅子から3mほど離れた長机の向こうに2名の試験官が座っていた

・ちょうど正面壁に時計があった

短く答えるよう心がけていたが、追加の質問があまり来なくて「このままだと点数が足りないのでは」と途中で不安になった

ラスト5分まで技術者倫理継続研さんの質問が来なくて焦った

・面接時間はちょうど20分で終了

具体的なやりとり等について何度も聞かれたため「本当に自分がやったか疑われている?」「コンピテンシーでなく、経歴の確認をされている?」と不安になった

・試験終了後に再現を作成している段階で、「経歴確認」でなく点数が足りていない「リーダーシップ」に関する助け船として、具体的な追加質問をされていた可能性に気付く

実際の試験では、受験者が自らの業務経験の中で「技術士としての資質(コンピテンシー)をどのように発揮したか」を簡潔に説明できるかが重要なポイントとなります。

場合によっては試験時間の延長もあるとなっていますが、私の場合は予定通りの時間で開始-終了しました。そのため、それまでの受験者も延長が無かったのだと思います。そうすると「20分」という試験時間は、あまり余裕が無いように思います。

試験に臨む際は、これまでの実務経験を整理し、明確な答えを2,3パターンずつ用意しておきましょう。 

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この記事を書いた人

現場監督シビライのアバター 現場監督シビライ 現場監督/技術士(建設部門)

大手ゼネコン勤務の20代現場監督。自身の経験をもとに土木資格の取得に役立つ情報を発信中。
【主な保有資格】
技術士(建設部門)、1級土木施工管理技士、コンクリート主任技士、コンクリート診断士 他

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