はじめに
まずは、技術士第二次試験の最難関である筆記試験に今年度合格された皆様、本当におめでとうございます。
長期間にわたる経験と努力が実を結び、見事にこの難関を突破されたことは、本当に素晴らしいことと思います。
しかし技術士の資格を手にするためには、最後の関門である「口頭試験」の突破が必要となります。この試験の一番怖いところは、口頭試験で不合格となった場合、次回試験ではまた合格率約10%の筆記試験から再受験しないといけないところです。そうならないためにも、今年の口頭試験で確実に合格を掴み取りましょう。
一方で、残念ながら今回筆記試験で不合格となってしまった方も多くいらっしゃるかと思います。
この試験はおよそ9割の方が不合格になる過酷な試験です。「試験に向けてこれまで努力してきたことは決して無駄にはならない」と言われても、そんな言葉では慰めにならないくらい今は悔しい思いをされていることかと思います。
しかしそんな中でも、このタイミングで来年に向けて口頭試験対策の記事を読んでいることは非常に素晴らしいことです。なぜなら、来年いくら筆記試験に通っても、4月の時点で”口頭試験を意識した願書”を出していない場合、口頭試験の突破が絶望的になる場合もあるからです。私は模擬口頭試験を何度か受けましたが、願書の経験論文が悪かったために「この内容で口頭試験突破はたぶん無理だね」と厳しく言われ、半泣きになっている受験生を何人か見ました。やっとの思いで筆記試験を突破したのに、いざ口頭試験直前にそうなると絶望的です。来年こうならないためにも、今のうちに4月の願書提出に向けた心の準備をしておきましょう。
この記事を最後まで読むと、「口頭試験は願書提出時から始まっている」と言われる所以も理解できるかと思います。今回の悔しさを次の挑戦への力に変えるためにも、ここで口頭試験の仕組みを理解して、次回の願書提出時の大きなヒントを得ましょう。
この記事では、口頭試験突破に向けて取り組むべき対策・勉強方法について、5つの重要なポイントを整理して解説しています。
- 1. 試験の仕組み・不合格パターンを理解する
- 2. 各コンピテンシーを正確に理解する
- 3. 想定される問題に対する回答を準備する
- 4. 模擬面接をして場慣れをする
- 5. 準備した回答をブラッシュアップする
合格された方も、今回残念だった方も、ぜひ参考にしていただき、技術系最高峰の技術士資格を全力で掴み取りにいきましょう。
技術士試験の最終ステージも、皆さんが確実に乗り越えられるよう応援しています。
合格率が80~90%の口頭試験は簡単なのか?
技術士第二次試験の口頭試験合格率は80~90%程です。これだけ見ると簡単な試験なのかと思われがちですが、決して簡単ではありません。事前の準備なしで臨めば、確実に落ちるでしょう。
合格率10%程の難関筆記試験を突破した猛者たちでも、10人に1,2人は落ちてしまうのが、この口頭試験です。受ける人のレベル・モチベーションが高いため、相対的に合格率も高くなっているというだけで、試験のレベル自体は高いです。難関医学部に合格した医学生達が受ける、医師国家試験の合格率が90%程なのと同じような原理かもしれませんね。
ではどうすればこの口頭試験を確実に突破することができるでしょうか。
まずは試験概要について確認していきましょう。
口頭試験の配点について
日本技術士会HP内の「技術士第二次試験実施大綱」より、口頭試験の配点は以下の通りです。
口頭試験
(総合技術監理部門を除く技術部門)
I. 技術士としての実務能力(60点満点)
1.コミュニケーション, リーダーシップ :30点満点
2.評価, マネジメント :30点満点
II. 技術士としての適格性(40点満点)
3.技術者倫理 :20点満点
4.継続研さん :20点満点
は?これ何の基準?
最初これを見たとき、私はそう思いました。この基準だけを見て、具体的な対策をできる方はそういないのでは無いかと思います。
正直な話、私は口頭試験の準備を始めるまで、技術士のコンピテンシーというものを知りもしませんでした。ただ筆記試験の対策をしていただけで、技術士試験全体を通しての対策は意識しておりませんでした。申込時に提出した業務詳細は良い内容で書けていたのですが、それは前年度試験に合格した先輩技術士が添削してくれたからでした。少なくとも私自身は、4月時点でコンピテンシーについては何も知らなかったのです。
しかし実際に口頭試験を終えてから見ると、これは非常に分かりやすい基準に思えました。
ここからは、口頭試験の基準をもう少し噛み砕いていこうと思います。
口頭試験で問われるものとは
技術士第二次試験の採点基準は、「技術士に求められる資質(コンピテンシー)」に基づいて行われます。要するに、国が定める「技術士」の資質を備えているかを試験全体を通して確認されているわけです。
具体的には、筆記・口頭試験を通して全部で8つのコンピテンシーを確認されます。
筆記試験に合格した時点で、このうち2つ(専門的学識、問題解決)が合格点に達しているため、口頭試験では残りの6つについて確認されるというイメージになります。
8つの技術士コンピテンシー
1.専門的学識 →筆記試験
2.問題解決 →筆記試験
3.コミュニケーション →口頭試験
4.リーダーシップ →口頭試験
5.評価 →口頭試験
6.マネジメント →口頭試験
7.技術者倫理 →口頭試験
8.継続研さん →口頭試験
そのため、口頭試験攻略のカギとなるのは、
「問われる技術士コンピテンシーを正しく理解した上で、”自分はコンピテンシーを正しく理解しています”ということを、試験官に時間内に正確に伝えること」
に尽きます。
ここで注意!
この口頭試験対策においては、大きな落とし穴があります。それは平成31年度(2019年度)の試験方法改正により、口頭試験の試問事項が変化していることです。
そのため2018年以前に技術士を取得した先輩方のうち、最新の試験制度を把握されていない方からの”自分の経験に基づくアドバイス”を受けると、不合格コースに乗ってしまう可能性があります。また令和5年度(2023年度)にもコンピテンシーの内容に一部改正がありました。
ここではそのような注意点も含めて説明していきたいと思います。
それではここから、具体的な対策ステップについて説明していきたいと思います。
口頭試験に向けてやるべき対策5選
1. 試験の仕組み・不合格パターンを理解する
口頭試験は加点方式?減点方式?
まず前提として、口頭試験の試験官は自分の筆記試験を採点してくれた採点者であると言われています。つまり当日緊張しているあなたの前に座っている面接官は、自分に合格点をくれた方々であるということです。
そのため、試験官はあなたを「落とそうとしている」のではなく「合格に導こうとしてくれている」スタンスで質問してくるという認識を持っておくのが大切です。
口頭試験の試験方式についてですが、加点方式と言われています。
私も自身の経験を通じて、以下の理由から加点方式であると考えています。
・受験生によって試問数がバラバラであること
・各質問が各コンピテンシーで答えられる内容になっていること
・場合によっては試験時間の延長もありえること
・試験結果で6割ちょうどの得点となっている項目があること
私は20分間で21回の試問がありましたが、受験生によっては40回以上試問を繰り返したという方もいました。減点方式であれば、試問回数にばらつきがあると公平な採点は難しいかと思います。
私の口頭試験の時も、十分に答えられたと感じたコンピテンシーについては、それ以上質問が来ませんでした。つまり、あるコンピテンシーについて合格基準の60%得点がもらえた時点で、そのコンピテンシーに関する質問は来なくなるように感じました。
人によって試験時間の延長もありえる点からも、あと少しで60%に達するという場合は、なんとか合格点に到達させようと追加で質問をしてくれるという印象を受けます。
以下は、私の実際の口頭試験の得点になります。
コミュニケーション・リーダーシップ:60%(8分)
評価・マネジメント :60%(6分)
技術者倫理 :70%(4分)
継続研さん :70%(1分)
※()内はそれぞれのコンピテンシーに関するやりとりに要した体感時間
その他にも、コンピテンシーに該当しない内容(雑談や経歴確認)でのやりとりが計1分程あり、試験時間はちょうど20分でした。
リーダーシップに関する質問は前半にも後半にも来ていたため、最後まで60%に達していなかったのだと思います。調整を図る上での関係者の説明などが分かりにくかったかなと、終わってから反省しました。
一方で評価やマネジメントについては、準備していた回答を話すとその後それ以上聞かれなかったため、合格点の回答と判断されたのかと思います。
なぜ「不合格パターン」を理解する必要があるのか?
上記のように、試験官は受験生に加点できるように質問をしてくれ、あなたを合格に導こうとしてくれるでしょう。
しかし、どんな内容を答えても大丈夫というわけではありません。話の内容によっては、一発アウトに繋がってしまう場合もあります。
つまり口頭試験において、こちらが「自分から致命的なミスをしない」ことが重要になってきます。
そのために、不合格となる口頭試験のパターンを理解し、自分から落とし穴に飛び込まないよう準備しておくことは非常に大事です。
まずは、よくある不合格パターンを理解していきましょう。
不合格パターンの例
①時間配分のミス
一つ一つの質問に対し、長々と答えすぎて全体の時間が足りなくなる。これが一番多いパターンだと思います。要するに「自分の回答が長すぎて、試験官が時間内に十分な質問ができない」というパターンです。
上記でもお話しした通り、1つの質問で1つのコンピテンシーについて聞いてくることが多いです。それに対し長い回答をしても、試験官が聞いているポイント以上の加点は臨めません。それどころか、要点を外して説明してしまっていた場合、試験官が評価したいポイントにたどり着けず、多くの時間を失うのに、加点はなしという事態にもなり得ます。
特に業務内容について説明する際は、申込時に提出した業務詳細について話すことを心掛けましょう。
・業務内容の中でコンピテンシーについて話すときは、基本的に申込時に提出した業務詳細について話す。
→試験官の手元には資料(申込時の業務詳細と筆記試験の必須I, 選択III)があるとされているため、業務詳細については、業務内容が伝わった状態で話ができ、書いている説明は省略できる。
→一方で全く別の業務について話そうとした場合、その内容について話し、理解してもらうためにも時間を要する。その結果、時間が足りなくなる。
②技術的に妥当でない提案
コンピテンシーについて話す際には、課題に対し技術的な解決策を提案する場面が出てきます。当然ですが、技術的に妥当な内容であることは大前提とされています。
試験官はあなたと同じ部門の先輩技術士であるため、経験や知識に基づかない、技術的に妥当でない回答をしてしまうと、コンピテンシー以前に技術士としての基本的な能力が欠如していると見なされます。
③技術者倫理に反する回答
また全ての回答内容について、倫理的に問題がないことも大前提となってきます。
これは各コンピテンシーについて聞かれている場合でも、同時に技術者倫理についても見られているということです。
例えば、コスト削減のために安全性を軽視するような発言であったり、情報の隠蔽・改ざん等を肯定するような発言をすると、技術者倫理のコンピテンシー項目で×がつき、一発アウトとなる可能性があります。
④申込時に提出した業務詳細の内容が絶望的
「①時間配分のミス」で示したように、限られた時間の中で的確な回答をするためには、事前に提出した業務詳細に沿った内容で回答するのがベストです。
そのため提出した業務詳細では、自分の役割や関係者、業務内容、コンピテンシーをどう発揮したかが分かりやすく書かれていることが前提となります。
つまり業務詳細の内容が分かりづらい、コンピテンシーに沿って書かれていない、試験官が読んでもイメージ出来ないような内容であれば、かなり不利なスタートとなってしまいます。業務詳細の内容がいまいちの場合は、外部模擬面接を受けるなどして、フィードバックをもらいながら対策を立てていきましょう。
このような不合格パターンを理解したうえで、これらの落とし穴を避けるために以下を意識して準備を進めていきましょう。
2. 各コンピテンシーを正確に理解する
なぜコンピテンシーの理解が必要なのか?
不合格パターンを理解したら、試験に向けて回答を準備していきます。その上で最重要になってくるのがコンピテンシーの理解になります。
コンピテンシーを正しく理解できていないと、どれだけカッコいい回答をしても得点には繋がりません。コンピテンシーを含まない内容で回答することは、得点がもらえないのに時間ばかり消費することになります。そのような回答は試験時間を圧迫し、不合格パターンに繋がることとなってしまいます。
そのため、まずはコンピテンシーを確実に押さえておくことが重要となってきます。
口頭試験で評価されるコンピテンシーは、以下の6つになります。
<技術士口頭試験で評価される6つのコンピテンシー(要約版)>
1.コミュニケーション:業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
2.リーダーシップ:業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
3.評価:業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
4.マネジメント:業務の過程において、要求事項を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
5.技術者倫理:公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会の持続性の確保に努め、技術士として倫理的に行動すること。関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
6.継続研さん:CPD活動を行い、コンピテンシーを維持・向上させ、新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。
各コンピテンシーごとの具体的な説明と想定される質問例については、こちらで詳しく解説しております↓
技術士受験生必見!コンピテンシーを制するものが口頭試験を制す
各コンピテンシーをこれまでの実務でどう発揮してきたか
これらのコンピテンシーを正確に理解することができたら、これまでの実務でどのように発揮してきたか具体例を整理していきます。口頭試験では色々なパターンで複雑な質問も来ますが、ほとんどのやりとりは、簡略化すると以下のようなイメージになります。
「あなたはこれまでの実務で〇〇をどのように発揮しましたか?」
「(これは〇〇に関する質問だな)」
「私は△△ということを通じて、〇〇を発揮しました。」
「(〇〇のコンピテンシーについては答えられているな、〇〇の項目は60点っと)」
「分かりました。ありがとうございます。」
実際にこのような直接的で分かりやすい聞き方は少ないですが、上記のように「これは〇〇に関する質問だな」と自分の頭の中で変換し、適切な回答をするということが必要になります。
ここで〇〇について誤った認識のまま試験に臨んでしまうと、試験官の意図とずれた回答をしてしまい、何度やりとりを繰り返しても得点がもらえない状態になってしまいます。
そして△△の部分に、業務内容に沿って適切な内容を答えられるように準備するのが、次のステップになります。
3. 想定される問題に対する回答を準備する
なぜ回答の事前準備が必要なのか?
口頭試験は、とにかく時間がギリギリです。
20分以内にきちんと要点を押さえた回答をし得点をもらうためには、あらかじめ整理した回答を準備し、質問に応じて簡潔に答えることが必須です。
特に技術士の受験生は、複数回目の受験で口頭試験に進む方が多いため、申込時の業務内容についても数年前の内容のもので提出している方が多いかと思います。そのため、当時の情景を思い出しながら、時間をかけて記憶を整理し回答を準備することをオススメします。
逆に20代など経験値が浅い状態で口頭試験に望む場合、業務内容の伝え方によっては「それだとコンピテンシーを十分に発揮できていないのでは?」と試験官に思われてしまう可能性もあります。合格者の答案事例などを見ていると「自分はまだこんな立場を任されたこともないし、こんな規模感の業務もやったことないんだよな」と不安になってしまうかもしれません。
しかし、業務の立場、プロジェクトの規模に関わらず、技術士のコンピテンシーを発揮できる場面はあります。1つの担当工事だけを見ても、コンピテンシーの発揮が必要となる場面は多々あります。コンピテンシーの内容を1つずつ確認しながら、日頃の業務内容について詳細を整理していきましょう。
コンピテンシーに繋げた回答を準備する上で、関係者の整理は欠かせません。「誰からどのような要求があり、誰に対してどういう提案をし、誰にどう伝えたか」など、各関係者との具体的なやりとりが回答のベースとなってきます。
時間内に簡潔に答えるためにも、関係者は具体的に整理しておきましょう。
具体的なステップ
①過去の業務経験を整理する
自分が関わったプロジェクトや業務の中で、コンピテンシーをアピールできる具体的な実績や事例を準備しておきましょう。提出した業務詳細に沿って説明することがベストですが、どうしても難しい場合はその他の業務内容から説明できるようにしましょう。その際は、それがどのような業務なのかも合わせて説明する必要がありますので、簡潔に関係者や自分の立場役割についても話せるように整理しておきましょう。
②質問に対する簡潔な回答を用意する
各質問に対しては、最小限の回答をすることを心掛けます。要するに、聞かれたことに対してのみ答え、それ以上の余計なことは自分から話さないということです。詳細についてもっと聞きたければ、試験官が更なる質問をしてきてくれるはずです。1つの質問に対して1回の回答で60%の得点を狙うのでなく、細かく15点の回答を4回繰り返すくらいのイメージで簡潔な回答を準備しましょう。
③1つのコンピテンシーに対して複数の回答を用意する
私が実際に口頭試験を受けた時のイメージとしては、1つのコンピテンシーで60%の得点ができた時点で、それ以降はそのコンピテンシーに関する質問が来なくなるように思いました。逆に言うと、同じコンピテンシーに関する質問が繰り返し来る場合は、自分の回答がまだ60%の基準に達していないという1つの目安になります。当日その状況になりネタが尽きるとパニックになるので、1つのコンピテンシーに対して複数の回答を準備しておくことが重要になります。
4. 模擬面接をして場慣れをする
なぜ模擬面接が効果的なのか?
口頭試験は筆記試験とは異なり、試験官との対話形式で進行します。そのため、自分では完璧な準備をしたつもりでも、相手によって思うように回答できないこともあります。
紙を前にするのでなく、実際に2,3人の試験官が前にいてずっとこっちを見ているのですから、独特な緊張感もあると思います。
こういった実際の試験の状況に慣れていないと、当日思ったように実力を発揮できないこともありますので、事前に模擬面接を行い、そういった不安を払拭して耐性をつけておくことが重要です。
模擬面接の利点
①試験官とのやり取りに慣れる
模擬面接では、第三者が試験官役を務めることで、実際の試験に近い状況で質問を受ける経験が積めます。社内や身内の方との模擬面接もありですが、知っている方だとどうしても緊張感に欠けてしまうため、できれば外部の模擬面接を受けることが望ましいです。
②フィードバックを受けて改善できる
模擬面接の後にフィードバックを受けることで、回答の改善点や相手からの見え方・印象についても、客観的な意見をもらうことができます。
「回答に困った時に下を向いてしまう、目を逸らしてしまう」
「困った時は顔を触ってしまう」
など、対峙した相手でないと分からない自分の無意識な行動にも気付く良い機会となります。
また回答の内容だけでなく、声のトーンや話すスピードなど、伝え方について客観的なアドバイスをもらえるのも良い点かと思います。
③時間配分の感覚
「20分で十分な回答ができるか」については、自分一人では練習しにくいところがあります。プレゼンの練習とは異なり、相手からの質問の長さや話すスピード、予想外の質問がきたときの自分の考える時間などは、相手がいないと発生しない時間だからです。私も模擬面接で時間が10分も超過してしまい、それがキッカケで自分の回答を見直すきっかけとなりました。
④想定試問の補強
十分な回答を準備して模擬面接に臨んでも、1,2問は想定外の質問が来るかと思います。その場合は、本番前に新しい質問に出会えてラッキーだと思い、自分の想定試問集に新しい質問と回答を追加し、どんどんと補強していきましょう。
こういった経験の積み重ねと何度も補強した想定試問集が、当日の自信と堂々とした姿勢を生み出し、試験官に良い印象を与えることに繋がっていくことでしょう。
5. 準備した回答をブラッシュアップする
なぜブラッシュアップが必要か?
一度準備した回答であっても、それが最適な回答であるとは限りません。準備段階では、自分がわかりやすいと思っていても、実際の試験では試験官にとって不明確に感じられる場合があります。
最もまずいパターンは、準備した回答が
・技術的に妥当でないこと
・技術者倫理に反していること
・コンピテンシーに沿った内容でないこと
となってしまっている場合です。
また、自身の業務経験に沿った内容となるため、自分では具体的なイメージが出来ていても、第三者からするとイメージが難しい内容もあるかもしれません。
自分で時間をかけて作成した回答だからこそ、愛着とプライドがあるかもしれませんが、当日適切な回答をするためにも、常に回答はブラッシュアップしていくことが大切です。
ブラッシュアップの方法
①フィードバックを活用する
模擬面接や第三者からのフィードバックを受け、自分の回答がどう受け取られているかを確認します。特に、専門的な内容が試験官に伝わりにくい場合は、わかりやすい表現に変更することが必要です。試験官は同じ部門の技術士ではあっても、専門分野が全く同じである可能性は低いかと思います。
専門知識が無い人でも理解できるか、身近な人に説明するなどして確認してみましょう。
②時間を意識して再度練習
回答が長すぎて時間内に収まらない場合、重要なポイントに絞り、無駄な情報を削る練習をしましょう。業務内容についても、自分の実績を具体的にアピールしたいがために、長々と詳細の説明をしないようにしましょう。
コンピテンシーを説明する上で欠かせない要点を中心に、質問に対してまずは必要最小限の内容で回答し、あとから補足を行うスタイルが効果的でしょう。
まとめ
技術士の口頭試験に合格するためには、適切な対策を行うことが不可欠です。不合格パターンを理解し、コンピテンシーの正確な理解と準備、模擬面接を通じた練習、そして回答のブラッシュアップを行うことで、試験当日に自信を持って臨むことができるでしょう。
具体的には、以下のステップで準備していくことが良いでしょう。
1.不合格パターン・試験の仕組みを理解する
2.各コンピテンシーを正確に理解する
3.想定される問題に対する回答を準備する
4.模擬面接をして場慣れをする
5.準備した回答をブラッシュアップする
筆記試験と異なり、口頭試験では試験官と直接対峙することになります。当日は自信を持って堂々と立ち振る舞えるように、万全の準備を整えて臨みましょう。
筆記試験を突破しているあなたには、すでに十分な技術士の資質が備わっていることと思います。しかしそれを時間内に的確に示すためには、念入りな準備が必要です。
技術士としての最終ステップを確実にクリアするために、ここで徹底的な対策を行っていきましょう!